素顔のベートーベン 音楽の革命家 3/5 エリーゼとは誰か?世界中のピアノ愛好家の憧れ エリーゼのために ベートーベン生誕250周年企画 共同通信より2020年秋5回連載コラム
素顔のベートーベン 音楽の革命家 3/5 ベートーベン生誕250周年企画 共同通信より2020年秋5回連載コラム
ピアノの初心者に「発表会で弾いてみたいと思う曲 ナンバーワンは?」と聞いたら、まず上がるのが「エリーゼのために」だ。かく言う筆者も、ピアノを習い始めたその昔、「エリーゼのために」を弾くことに憧れて頑張って練習した。その頃はベートーベンがどれほどの人かは全く知らなかった、のにである。このエリーゼ熱は日本だけなのかと思ったら、海外でも大人気であることを欧米生活を始めてから知った。
「エリーゼ… 」は技術的にはさほど難しくなく、叙情的ながら耳に残る有名な「タラタラタ…」と始まる旋律の合間合間に、華やかな中間部、激情の後部が挟まれるサンドイッチのような形をとっている。なんという傑作をベートーベンはかいたのか。40歳の恋するベートーベンが作曲した小品とされているが、冒頭の旋律が発展し「ミ」の音が音程を変えつつ繰り返されるところは、恋に焦がれた涙のしずくがひっそりとこぼれ落ちる-、そんな雰囲気を醸し出す。技術的には簡単だが,音楽的には非常に深く、弾けば弾くほど新たな 音楽的表現に出会える。一生涯弾き温めていきたい、そんな曲である。
さて肝心のエリーゼとは誰か。様々な研究がされていて、3人ほどの候補がいるらしい。ベートーベンの直筆は判読し難く、「エリーゼがテレーゼの間違いではないか」、などとも言われているが真実はいまだ謎に包まれている。確かに、ベートーベンお世辞にも達筆とは言えないが、だからといって、本人の死後見つかった恋文を世界中の人に根掘り葉掘り読まれ250年たっても研究されてしまうとは。この売れっ子作曲家は天国でどんな顔をしているだろう。
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